【小説】天の川2
あの日見た、夏の大三角と天の川はいつの間にか消え、夜空にはオリオンが浮かんでいた。
3月。卒業の季節。
みんな、それぞれの進路に進み、それぞれ違う生活がはじまる。
新しい場所。新しい出会い。
嬉しいけど、悲しい季節。
卒業式が終われば、あんたとはもう…
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「あー、終わったな、卒業式」
卒業式も終わり、最後の学活も、写真撮影も、何もかも終わった帰り道。
あなたと歩く、最後の帰り道。
すっかり日が落ちて、あたりが暗くなってきた。
「早かったね」
「これで、しばらくは離れ離れだなー」
「ん……てかさ…」
「ん?」
「ほんとに、東大?」
「うん」
キョトンとした顔で私を見る。
彼の顔に疑いの文字はない。
「俺、受験勉強がんばったんだぜ?N高、合格したし、目標があるから高校も頑張っていけそう」
「…ふふっ」
迷いのない彼の姿に思わず笑がこぼれた。
「な、なんだよ…」
「ううん、なんでも。楽しみにしてるよ」
「ああ」
こうやって一緒に帰ることも、一緒に勉強することも、一緒に笑うことも、もう、ないんだな。
これからは、それぞれの道で、それぞれの生活を送るんだな。
「おい、なんで泣いてんだよ」
「え…?泣いてないし…」
「嘘つくなよ」
「そんなこと…………ごめん、あれ、止まらないや」
何でもないふりしてた。
でも、やっぱり、寂しいし、つらい。
離れたくない。
「大学まで、待てないか?」
「…………多分」
「じゃあ、こうしよう」
「?」
君の顔が近づく。
「へ/////」
「毎年7月7日が、俺達の記念日だ。その日に会おう」
「七夕……」
「そう、七夕」
それが、私たちの大切な大切な1日になった。
織姫と彦星が会えるのは、来年。
その日でそれぞれの道で、頑張っていこう。